北海道西海岸の町には、北海道の内陸に比べ古くから和人の往来と繁栄の歴史があり、当時の北前船で運ばれてきた日本文化を随所に感じられます。また岩内は日本で初めてビールの原料「ホップ」が発見された町でもあります。
米国人のアンチセルが、日本で初めて岩内で野生のホップを発見したのは1871(明治4)年のこと。この発見が、現在のサッポロビール誕生の歴史につながっています(※注1)。この岩内の地で岩内産原料にとことんこだわったクラフトビールを作りたいという熱い思いが実り、2022年、ホップ発見から150年の時を経て岩内初のビール醸造所「イワナイブルワリー&ホテル」が誕生しました。いわない温泉高原ホテルの敷地内にあるログハウスが工場をかねたビア・バーとなっており、階上に客室もある宿泊できる醸造所となっています。
岩内には古くより、漁業の親方衆の豊かな富を土台として、高い芸術と文化がもたらされました。岩内町郷土館に残るリードオルガンは、明治期に横浜で製造された「国産最古」の貴重なもので、ニシン場親方が所有していたものです。オルガンは修復され120年以上昔の懐かしい音色が甦り、来館者は自由に触れて演奏することもできます。神社参道にある「含翠園」は、大正時代に豪商梅沢家によって築庭された本格的日本庭園です。本州から取り寄せた名木や石清水など、和の風情に満ちた空間が広がっています。※現在「含翠園」は、改修工事中です。
岩内には郷土出身画家の木田金次郎美術館と、日本最大級200点のピカソ版画コレクションで有名な、荒井記念美術館の二軒の美術館があります。木田金次郎は有島武郎の小説『生れ出づる悩み』の主人公モデルであり、生涯にわたりこの町で絵を描き続けました。町内には現在も絵を描く人が多く、市井の町民画家や岩内高校美術部の作品、また岩内出身の画家山岸正巳の名作などが、商店や飲食店にさりげなく飾られ、いつでも誰でも鑑賞することができます。美術館から、街角にある絵画まで「絵の町いわない」を探検してみてください。
百年以上の歴史を持つ岩内の神社と仏閣は、古式ゆかしい佇まいで訪れる人に静かな感動を与えてくれます。岩内神社の参道と境内の桜は5月初旬に満開となり、岩内岳を背景に見事な桜並木が見られます。毎年7月7〜9日の神社例大祭は、港町ならではの盛大さで、伝統的な神輿行列や神事が行われ、多くの人で賑わいます。また、帰厚院の「大阿弥陀如来坐像」は、東京以北最大の木造大仏像としても有名です。寺院の並ぶ通りは通称「寺町通り」と呼ばれ、秋には美しい銀杏並木に彩られます。