いつもの毎日から抜け出して、心ゆるせる友だちとの「いわない温泉」の旅。はじめて訪れる町なのに、何故か懐かしい空気に包まれる。出会う人は、みんな温かい。きっとまた訪れたいと感じてしまう何かが「いわない温泉」には、確かにあります。
港とバスターミナルに近い、潮風とカモメの声が聞こえる場所にある「木田金次郎美術館」。岩内の郷土画家、木田金次郎は生涯をこの港町で生き、岩内港や日本海、岩内岳など、愛する故郷の風景を描き続けました。静けさに包まれた館内では、木田の感性溢れる作品とその人生に感動。光あふれるカフェラウンジで一息ついたら、最上階の屋上へ。ここから岩内の山と海を望む、360度の展望が楽しめます。画家の描いた岩内、その作品世界はそのまま、実際に見える美しい町の風景と重なっていきます。
きだきんじろうびじゅつかん
岩内は200年以上前の江戸時代から、和人の往来のあった古い町です。町の深い歴史を探りに「岩内町郷土館」へ。ニシン漁で繁栄した町は京や大阪、東京とも北前船の往来があり、北海道の辺境ながらもこの地域の都市として発展した文化がありました。町の有形文化財でもある貴重な「国産最古」の横浜西川リードオルガンは、自由に触れて演奏することができます。綺麗に修復され、調律の手入れもされているという120年前のオルガンの音色は、耳と心に深く残る不思議な懐かしさを感じました。
いわないちょうきょうどかん
「IWANAI BREWERY&HOTEL」は、築30年という重厚なログハウス。内部はドッシリとした柱や木の温もりが広がり、その奥に銀色の醸造タンクがずらりと並びます。出来たてクラフトビールがタンクから直にジョッキへ。こんなに嬉しい体験はありません。海からの風を受けて青々と育ったフレッシュホップを、収穫から24時間以内に仕込んだ「イワナイ生ホップヘイジー」は季節限定のビール。他にも種類は豊富にあり、極上の地元産ビールを味わうビアバーからは、美しい町の夕日と夜景が楽しめます。
いわないぶるわりーあんどほてる
選び抜かれたよいお酒と、地元の素材を使った料理が楽しめる、隠れ家的な小さなお店、ミノタケ料理店。店主の杉山さんは、札幌での料理人修行と、地元の寿司店で長年腕を磨いた経験を活かし、食べる人が心から喜ぶような食を振るまってくれる。和洋中のジャンルにとらわれず、一見普通の家庭料理である、ポテトサラダや天ぷらなどのメニューも、素材の良さと杉山さんの腕にかかれば魔法にかかったシンデレラのように変身。お酒とともに会話も弾む料理に、いつしか心も満たされていきます。
みのたけりょうりてん
美味しい食と上質な温泉に癒され、夜が更けるまで楽しむのは、宿ではじまる気の置けない友とのおしゃべり。一人旅もいいけれど、「色々あるよね」と女子同士でしか伝わらない気持ちを語りあって共感する時、心の中の最後の荷物が下ろされていく。ここからの美しい夜景と星空は、訪れる人をそんな素直な気持ちにさせてくれます。飾り気はないかわりに素朴で暖かく、特別なものがすぐ手に届くところに普通にあるところ。「いわない温泉」は、そんな小さな港町の、魅力あふれる温泉ビレッジです。